心臓血管外科
- 1階
- フロアマップ
- 概要・特色
- スタッフ紹介
- 外来担当医表
- 診療実績
- 進化する低侵襲心臓手術 MICS手術と不整脈治療
- 胸腔鏡下左心耳切除術およびアブレーション手術
- ①下肢静脈瘤とは
- ②下肢静脈瘤の症状は
- ③下肢静脈瘤の治療は
- 低侵襲な下肢静脈瘤治療
- 下肢静脈瘤について
概要・特色
山口県西部の心臓血管外科領域の核として、年間約170-180例の心臓大血管の手術と、約100例の末梢血管の手術を施行しております。
<開心術>
単独冠動脈バイパス術は低侵襲で人工心肺を用いないOff Pump CABGをほぼ全例に施行しております。また、バイパスに用いるグラフトは、ほぼ全例に長期開存率の優れている内胸動脈グラフトを用いております。
近年高齢化に伴い、80歳以上の大動脈弁狭窄症の患者さんが増えております。このような高齢の患者さんにも、安全に大動脈弁置換術を受けていただいております。最近では92歳の患者さんに大動脈弁置換術を行い、お元気で退院していただいております。
僧帽弁閉鎖不全症に対しては、高齢の患者さんでも弁形成術を第一選択として実施しております。
また、単独僧帽弁形成術は原則として皮膚切開の小さい(7-10cm)低侵襲のMICS(Minimally invasive cardiac surgery)を行っております。この手術ですと傷が小さく、術後の疼痛も軽いです。
弓部大動脈瘤、大動脈解離の患者さんに対しては、ご高齢(最高89歳)の患者さんに対しても手術を行い、元気に退院していただいております。
<ステントグラフト内挿術>
胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤に対しては、低侵襲なステントグラフト治療を実施しています。ステントグラフトはこれまで手術不能と言われきた高齢の患者さんや手術既往のある患者さんに対しても実施可能なことが多く、入院期間も1週間以内と短いことが特徴です。
なお、急性大動脈解離など緊急手術には随時対応しております。いつでもご連絡下さい。
当施設は以下の施設基準を満たしています。
心臓血管外科専門医認定機構の基幹施設
胸部大動脈瘤ステントグラフト実施施設
腹部大動脈瘤ステントグラフト実施施設
当院は日本成人心臓血管外科手術データベースならびに日本先天性心臓血管外科手術データベース参加施設です。患者さんのデータは匿名で上記データベースに登録させていただくことが義務付けられております。個人が特定されることはありませんが、データ登録を望まれない方はお申し出ください。詳しくはホームページをご参照ください。
http://www.jacvsd.umin.jp/about.html
http://jccvsd.umin.jp/
スタッフ紹介
伊東 博史 副院長 兼 心臓血管外科科長
山口大学 臨床准教授
心臓血管外科専門医認定機構 基幹施設修練責任者
日本心臓血管外科学会 評議員
日本心臓血管外科学会 専門医
日本外科学会:指導医・専門医
日本胸部外科学会:認定医・正会員
関西胸部外科学会 評議員
国際移植学会会員
ICD(インフェクションコントロールドクター)
池田 宜孝
日本外科学会 専門医・指導医
日本心臓血管外科学会 専門医
日本血管外科学会認定血管内治療医
胸部ステントグラフト 実施医
腹部ステントグラフト 指導医
下肢静脈瘤レーザー 指導医
髙橋 雅弥
日本外科学会 専門医
心臓血管外科 専門医
綾田 亮
外来担当医表
外来窓口:[1階]12番 心臓血管外科
令和2年4月1日より
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||
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心臓大血管 末梢血管・静脈瘤 心房細動外科 |
午前 |
担当医
池田宜孝 -
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- |
髙橋雅弥
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伊東博史
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- |
伊東博史
池田宜孝 -
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- ※外来担当表は、予告なく変更される場合がございます。来院前に必ずお電話でご確認ください。
- ※休診予定については、お電話にてご確認ください。連絡先:083-262-2300(代表)
診療実績
進化する低侵襲心臓手術 MICS手術と不整脈治療
心臓手術も様々な方法で行われますが、近年低侵襲化が進んで来ています。心臓手術といえば、胸の真ん中を大きく切り開いて行うイメージが強いですが、比較的簡単な手術では5-8cmの小さな傷や1cm程度の穴を数カ所開けるだけで行うことが出来るようになりました。当院で現在行っている低侵襲心臓手術をご紹介いたします。
MICS Minimally Invasive Cardiac Surgery 低侵襲心臓手術
右の胸の脇に6-8cmの小さな切開を加えて行うことが出来る手術で、主に大動脈弁置換術、僧帽弁形成術、三尖弁形成術、心臓腫瘍摘出術などが対象となります。この手術の利点は傷が小さいことで術後の回復が早いということです。通常の心臓手術では胸骨正中切開といって、胸の真ん中にある骨を縦に切って手術を行います。そのため、術後2,3ヶ月は重いものを持ってはいけないなどの運動制限が伴いました。また、傷が感染すると治り難く入院期間が長くなるなどの問題がありました。しかしながらMICS手術では術後の運動制限はなく、傷の感染もほとんど問題になることがないという利点があります。手術時間は少し長くなりますが、術後退院までの期間は正中切開2-3週間に比べて1-2週間で退院でき、早期に仕事へ復帰することが可能です。近年カテーテルで大動脈弁置換術(TAVI)を行われる症例もありますが、大きな合併症を引き起こすこともあり、適応は限られています。この治療はもともと悪い弁はそのまま取り除かず人工弁をはめ込んだりすることで、脳梗塞や不整脈を引き起こすことがあり時には死に至ります。将来機器の進歩で改善されていくと思いますが、不確実な治療となる場合もあり、現時点では、やはり手術が可能な方にはきちんと悪くなった弁を取り除き、新しい人工弁を埋め込む方が良いと考えております。MICS AVRであれば傷が小さいだけで、悪くなった弁はきちんと取り除き、最適な人工弁の埋め込みが可能となりますので、こちらの方が優れた治療法であると考えております。
当院では2015年よりMICS僧帽弁形成術を開始し、2019年よりMICS大動脈弁置換術を始めており、単独僧帽弁手術、大動脈置換術は原則MICS手術です。

胸骨正中切開


MICS大動脈弁置換術 5cmの小切開
胸腔鏡下左心耳切除術およびアブレーション手術
Wolf-Ohtsuka法(WO手術)
心臓が脳を攻撃する病気があることをご存知でしょうか?
プロ野球元監督の長嶋茂雄さんやサッカー日本元代表監督のオシムさんが脳梗塞になられたことをご存知の方は多いと思います。
なぜ体の丈夫なお元気な方が突然、脳梗塞になられたのでしょうか。
脳梗塞の原因は様々ですが、約3割の方が心臓が原因と言われております。心原性脳梗塞と呼ばれます。心原性脳梗塞のほとんどの原因が心房細動という不整脈から来ると言われております。心房細動とは年齢とともに発症する人が増えていく病気で80歳以上の人口約10%がかかると言われています。
心臓には部屋が4つあるとよく聞かれると思いますが、左心房、左心室、右心房、右心室 に分けられます。血液の流れは、全身から戻ってきた血液が右心房にたまり、右心室へ運ばれます。その後肺に運ばれ、酸素を取り込んだ血液は、左心房へと進み、左心室から全身へと流れていきます。心臓が規則正しく収縮している間は、血液はスムースに心臓から全身へと流れていきます。ところが、心房細動では血液の流れがスムースに行かなくなります。
心房が規則正しく収縮しなくなると、心房で血栓がすぐ出来てしまいます。そのほとんどの血栓は左心耳というところで出来ます。左心耳は左心房の一部で、犬の耳のような形をして、左心房から飛び出した空間を形成しています。 心房がきちんと収縮していれば、左心耳での血液は澱むことなく流れていきますが、心房細動になると血液のよどみが左心耳の中でできるため、澱んだ血液はすぐに固まってしまいます。左心耳で固まった血液のかたまり、いわゆる血栓ですが、これが心臓から出ていく血液の流れに沿って、全身へ飛んでいってしまうことがあります。この血栓が運悪く脳の方に飛んでしまったら、脳の血管を塞いでしまい、脳梗塞を引き起こしてしまうわけです。
このように心房細動という病気は放置しておくと脳梗塞をきたしてしまう可能性が高いため、予防が必要となります。 もっとも一般的な治療法は抗凝固薬を一生飲み続けることです。抗凝固薬とは、血液を固まりにくくし血栓ができにくくする役目をします。血栓ができやすい心臓にとっては、内服し続ける限り脳梗塞の発症は年間2-4%に抑えられると言われております。しかしながら、抗凝固薬を飲み続けることで、高齢になればなるほど血液が固まりにくいという副作用が増えてきます。出血が止まりにくいとか、下血をしやすくなるなどの副作用で、時には命を落とすかたもおられます。抗凝固薬はもろ刃の剣な訳です。また一生内服が必要となるため、薬代もばかになりません(新しい抗凝固薬は一日の薬価が546円)。
では左心耳がなければどうなるでしょうか。心房細動でできる血栓が左心耳であるとするならば、左心耳を塞いだり取り除いたりすれば良いのです。
左心耳を塞いだり取り除いたりする方法はいくつか考えられてきています。カテーテルで塞ぐデバイスも開発されてきておりますが、現時点では成績はあまり良いとは言えません。ほとんど内服と変わらない成績で、抗凝固薬の離脱は困難な方が多いのが実情です。しかも高額な医療費がかかります(Watchmanという日本で使用できるデバイス費用は147万円と高額です)。
一方で、我々が行なっている胸腔鏡下左心耳閉鎖術は左心耳の入り口を完全に塞ぐことが可能となります。5mmから10mm程度の穴を胸の壁に4ヶ所開けるだけで傷もほとんど目立ちません。Wolf-Ohtsuka(WO)法と言います。手術に用いられる自動吻合器代も6万円と、Watchmanに比べるとかなり安価です。手術時間も30分から1時間程度で、入院期間も3日から7日程度です。この手術の最大の利点は、術後の抗凝固薬の中止が可能となることです。大塚博士のデーターによると左心耳切除を行われた心房細動の患者さんは、抗凝固薬を中止しても年間0.25-0.5%の人しか脳梗塞にならないと言われております。アメリカやヨーロッパの施設からも同様な成績が報告されております。また、費用も一生薬を内服する方法や、カテーテルデバイスで閉鎖する方法よりもずっと安くすみます。
繰り返しになりますが、左心耳がある限り、抗凝固薬を内服しても年間2-4%の 脳梗塞の危険がありまた同じ頻度で重篤な出血をきたすと言われておりますから、特に出血の危険の高まる70歳以上の高齢の患者さんにとっては、左心耳閉鎖術を受けられるメリットは大きいと考えております。
当院ではこのような観点から、2年前より胸腔鏡下左心耳閉鎖術を開始し、2019年12月現在13例の患者さんに行なってまいりました。ほとんどの患者さんが抗凝固薬を離脱され経過は順調です。脳梗塞の心配も、また抗凝固薬内服を続けた際の出血の不安からも解放されておられます。
また、胸腔鏡下左心耳閉鎖術の際に、不整脈の手術も同時に行うことも可能です。内科でカテーテルアブレーション(カテーテルでの不整脈治療 電気焼灼術)を受けられたのち再発した患者さんに対しても、左心耳閉鎖術の際に同時に胸腔鏡での不整脈治療(アブレーション)を行い、それまで起こっていた不整脈が止まったと言われる患者さんもおられます。
胸腔鏡下左心耳閉鎖術および不整脈治療(アブレーション)(WO手術)行なっている施設は全国的にも珍しく、山口県、北九州では当院が唯一の施設です。
現在のところWO手術を受けられるために東京まで行かれる方も多いですが、当院は、今後山口県各地はもとより、九州北部を含めた下関近郊での拠点病院としての役割を担ってまいりたいと思います。
手術のイメージ
切除された左心耳
WO手術の傷

①下肢静脈瘤とは
下肢静脈瘤は成人の10~50%に見られる比較的ありふれた病気です。
下肢静脈は動脈によって運ばれた血液を心臓に向かい運ぶための血管です。ただ、人間は立って暮らしているので重力に逆らって下から上に運ぶ必要があります。
下肢の血液を心臓へ向かって運ぶために幾つかの機能があるのですが、特に大事とされるのが①ふくらはぎの筋肉によるポンプ作用、②静脈弁です。
下肢静脈の静脈弁は、立っている時、血液が足に向かって逆流するのを防ぐ役目があります。
この静脈弁が何らかの原因で破壊されて血液が逆流すると表在静脈(皮膚に近い静脈)が蛇のように曲がり『下肢静脈瘤』という状態になります。

②下肢静脈瘤の症状は
ただ進行すると湿疹、色素沈着(足が茶褐色になる)、脂肪皮膚硬化症といった皮膚病変が出現し、最終的には静脈性潰瘍が出現します。この静脈性潰瘍は、日常生活に支障があるばかりでなく、難治性で一筋縄では治療が立ち行かなくなるため時間的、経済的にも支障を来すようになります。

③下肢静脈瘤の治療は
a) 保存的療法 (弾性ストッキング)・硬化療法
弾性ストッキングという締め付けの強いストッキングを履くことで、下腿(ふくらはぎ)の筋ポンプ作用を補助し下肢静脈還流を改善させます。
硬化療法は静脈瘤に薬を注入して固める方法です。軽症の静脈瘤に有効とされています。
b) 下肢静脈ストリッピング
従来の治療法で現在でも行われています。弁が壊れた表在静脈をストリッパーという器具を用い抜去します。下記の血管内治療に比べ高侵襲(ダメージ大きい)です。

低侵襲な下肢静脈瘤治療
最近の治療法です。今まではストリッピングしていたような病態に対し低侵襲で治療ができます。レーザーまたは高周波を用い静脈を焼灼し血管内を閉塞させます。
2011年に波長980nmレーザーによる治療が保険適用となりました。
2014年には上記のレーザーより低侵襲に血管内治療が行える高周波(ラジオ波)、レーザー(波長1470nm)が保険適用となりました。
当施設ではこの最新機器を導入し、より低侵襲な下肢静脈瘤治療が行えるようになりました。
下肢静脈瘤が気になる方、「足のだるさ、むくみ」が気になる方は心臓血管外科外来までお問い合わせ下さい。
