MICS手術と不整脈治療

 心臓手術も様々な方法で行われますが、近年低侵襲化が進んで来ています。心臓手術といえば、胸の真ん中を大きく切り開いて行うイメージが強いですが、比較的簡単な手術では5-8cmの小さな傷や1cm程度の穴を数カ所開けるだけで行うことが出来るようになりました。当院で現在行っている低侵襲心臓手術をご紹介いたします。

MICS Minimally Invasive Cardiac Surgery 低侵襲心臓手術

 右の胸の脇に6-8cmの小さな切開を加えて行うことが出来る手術で、主に大動脈弁置換術、僧帽弁形成術、三尖弁形成術、心臓腫瘍摘出術などが対象となります。この手術の利点は傷が小さいことで術後の回復が早いということです。通常の心臓手術では胸骨正中切開といって、胸の真ん中にある骨を縦に切って手術を行います。そのため、術後2,3ヶ月は重いものを持ってはいけないなどの運動制限が伴いました。また、傷が感染すると治り難く入院期間が長くなるなどの問題がありました。しかしながらMICS手術では術後の運動制限はなく、傷の感染もほとんど問題になることがないという利点があります。手術時間は少し長くなりますが、術後退院までの期間は正中切開2-3週間に比べて1-2週間で退院でき、早期に仕事へ復帰することが可能です。
 近年カテーテルで大動脈弁置換術(TAVI)を行われる症例もありますが、大きな合併症を引き起こすこともあり、適応は限られています。この治療はもともと悪い弁はそのまま取り除かず人工弁をはめ込んだりすることで、脳梗塞や不整脈を引き起こすことがあり時には死に至ります。将来機器の進歩で改善されていくと思いますが、不確実な治療となる場合もあり、現時点では、やはり手術が可能な方にはきちんと悪くなった弁を取り除き、新しい人工弁を埋め込む方が良いと考えております。MICS AVRであれば傷が小さいだけで、悪くなった弁はきちんと取り除き、最適な人工弁の埋め込みが可能となりますので、こちらの方が優れた治療法であると考えております。
 当院では2015年よりMICS僧帽弁形成術を開始し、2019年よりMICS大動脈弁置換術を始めており、単独僧帽弁手術、大動脈置換術は原則MICS手術です。

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