胃がん

胃がんとは

 胃がんは、胃の壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん細胞になったものです。細胞の分類としては、組織型のほとんどが腺癌で、分化度は大きく分類すると、分化型と未分化型に分けられます。同じ胃がんでも、細胞の組織型や分化度で治療方針は異なります。

胃がんの症状

 胃がんは、早い段階で自覚症状が出ることは少なく、かなり進行しても無症状の場合があります。代表的な症状は、胃の痛み・不快感・違和感、胸焼け、吐き気、食欲不振などがありますが、これらは胃がん特有の症状ではなく、胃炎や胃潰瘍の場合でも起こります。検査をしなければ確定診断はできませんので、気になる症状があるときには早めに医療機関を受診し、検査を受けましょう。

胃がんの治療

1.手術(外科治療)

 胃がんの標準的な治療法は、手術です。胃を切除する範囲は、がんのある部位と病期(ステージ)の両方から決定します。癌のある部分の胃の切除と同時に、胃の周囲のリンパ節郭清を行い、食物の通り道をつくり直します(消化管再建)。

 胃がんの手術では、転移の可能性があるリンパ節を過不足なく切除するということが重要となるため、リンパ節郭清の範囲によって、胃の切除範囲も決まってきます。

 胃の切除範囲によっていくつかの方法があり、代表的な手術は、胃全摘術、幽門側胃切除術、幽門保存胃切除術、噴門側胃切除術になります。

2.腹腔鏡下胃切除

 腹腔鏡手術は、腹部に小さい孔を数箇所開けて、専用のカメラや器具で手術を行う方法です。
通常の、開腹手術に比べて創が小さいため、患者さんの希望もあり、手術件数は徐々に増加しています。おなかの中で行う手術内容は腹腔鏡手術も開腹手術も同じです。腹腔鏡手術が侵襲の少ない手術を行っているわけではなく、体表の創が小さいため、体への負担が軽いのではないか、と推測されています。
 しかし、通常の開腹手術と比べて、リンパ節郭清が難しいこと、消化管をつなぎ直す技術の確立が十分ではないことや、開腹手術と比べて合併症の発生率がやや高くなる可能性も指摘されています。
2010年版の胃癌治療ガイドラインでは、胃がんの腹腔鏡手術は、病期(ステージ)Iの早期胃がんへの臨床研究として行うべき治療として位置付けられています。
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3.内視鏡治療

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 内視鏡(胃カメラ)を使って、胃の内側からがんを切除する方法です。切除後も胃が温存されるため、食生活に対する影響がほとんどなく、生活の質を保ちながら、がんの治療を行えることがその最大の利点です。

 治療の適応は、早期の胃がんでがんの深さ(深達度)が粘膜にとどまっていて、リンパ節に転移している可能性がない場合です。近年は、治療の適応の拡大や技術的な進歩により、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が普及しています。

 内視鏡治療で胃がんが確実に切除されたかどうかは病理検査で確認し、治療の適応を超えていた場合は手術(外科治療)が追加で必要なこともあります。

4.薬物療法(抗がん剤治療)

 胃がんの薬物療法(抗がん剤治療)には2つの役割があります。1つは、別の臓器に転移しているため、手術(外科治療)や内視鏡治療で治すことが難しい場合に行われます。2つ目は、手術の後に行われる補助的な治療で、手術後に残っている可能性がある、微小ながん細胞による再発を少なくするために行われます。

1.手術や内視鏡治療が難しい場合
 胃がんを完全に治すことが難しい場合でも、がん自体の進行を抑え、症状を軽減することを目標とします。

2.術後補助化学療法
 手術で切除できたと思われる場合でも、目に見えないような微小ながんに対して、再発予防を目的として行われる治療です。

3.術前補助化学療法
 再発の要因となる、目に見えないような小さな転移(微小転移)に対して、また手術前の大きさでは切除が難しいがんを小さくする目的などで行われる治療です。

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