膀胱がん

済生会下関総合病院の膀胱がん診療の特徴

 膀胱がんは経過が長く,予後の予測しにくい疾患です。再発率も高く,治療方法も外 科切除から,放射線や化学療法を利用した膀胱温存療法まで幅廣いのが特徴です。当院 の診療の特徴として、放射線や化学療法を利用した膀胱温存療法を積極的に思考し、全摘をなるべくしない治療をすすめています。手術療法としては、神戸大学、鳥取大学、 神戸の神鋼病院の医師と連携を取って、小腸を利用した代用膀胱の作成も子なっています。 

膀胱がんの統計

 日本では、膀胱がんは人口 10 万人あたり 10 人程度の発生率と思われます。膀胱が んは症状が早期より出やすいため早期発見率が高く、また悪性度の低い乳頭状がんと呼 ばれるものの割合が多いため、比較的死亡率の低いがんです。男女比は 3 対 1 と男性に多く、60 歳以降の高齢層に多く見られ、また、若年層より高齢層に悪性度の高いがんが多いのが特徴です。

膀胱がんの症状

 肉眼的血尿および頻尿、排尿痛などの膀胱炎症状が 2 大症状です。約 80%の患者さんは無症候性(痛みなどのない)肉眼的血尿を呈し、膀胱炎症状は 20~30%の人に見られます。 

膀胱がんの診断

膀胱鏡検査

 尿道からファイバースコープを挿入して膀胱内を観察する検査で、軟性ファイバース コープの改良により検査の苦痛は格段に軽減してきました。

膀胱がんの治療法

筋層非浸潤性(早期)がんの治療

1.経尿道的腫瘍切除術 (TUR-Bt)

 腫瘍の悪性度が低く、多発傾向の乏しい場合、TUR および術後 24 時間以内の抗がん剤を単回注入療法を行います。

2. TUR-Bt+膀胱内注入療法

 腫瘍の悪性度が高いか、多発傾向の強い場合には、TUR のあとでもう一度TURを行い削り残しや、筋層浸潤の見落としがないかを確認します。これをセカンドルックTUR と呼びます。筋層への浸潤が否定されたならば再発予防を目的とした注入療法を行います。注入療法に用いる薬剤としては、BCG などの薬剤です。

3. 膀胱全摘除術

 早期がんでも、腫瘍が広範囲に多発していたり、膀胱内注入療法に反応せず再発をくり返す場合には、膀胱全摘除術を考慮します。

浸潤性がんの治療

1.膀胱全摘除術+尿路変向術

 膀胱を全摘した場合には尿の始末をつけることが必要になり、これを尿路変向といいます。方法としては回腸導管造設術が一般的です。しかし、最近では長め(約 60cm)の 腸管を利用して代用膀胱を造設し、残した尿道とつないで自排尿を可能にする方法(ネオブラダー造設)もよく行われます。膀胱がんが多発性の場合は尿道がんの再発リスクが高くなるので注意が必要です。
 がんが膀胱壁を貫いている場合(T3~4)やリンパ節転移がある場合は術後補助化学療法を奨めています。当院では 2-3 コース行っています。 

2.抗がん剤併用放射線療法

 化学療法単独では治癒する確率が低いので有効例には外科的治療や放射線治療を併 用する集学的治療を考慮します。

膀胱がん再発の診断と治療

 表在性がんでは TUR 後、1 年目は 3 ヶ月ごとに内視鏡検査と尿細胞診検査を行います。再発がなければその後の 2~5 年間は 3-6 ヶ月ごとに行います。5 年以降は 1 年に 1 回ですが、原則として 10 年以上続けます。腎臓(腎盂)・尿管などの上部尿路腫瘍発生に対する診断検査は 1 年に 1 回くらいです。
 膀胱内再発が見られたら再び TUR を行うことが多いのですが、場合によっては BCG や抗がん剤の膀胱内注入療法を行います。注入療法に抵抗性を示し、腫瘍が広範囲に再発したり、尿道や下部尿管に進展したり、浸潤がんに進行したりした場合は膀胱全摘除術を考慮します。

治癒率

 生存率に最も影響するのは、がんの浸潤度と組織学的悪性度です。
 膀胱がんによる死亡に限定して5年生存率を見ると、ステージAが94.4%、Bが87.5%、 C が 68.6% そして Dが 27.3%となっています。

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