乳がん

乳がんの診断

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 近年乳がんの増加は顕著であり、米国女優の予防的乳房切除手術でも一時話題となりました。最近の統計では日本人女性の12人に1人が罹患すると言われ、女性のがん罹患数第1位となっています。なおまれではありますが、男性にも乳がんが発生することがあります。乳がんの発生には女性ホルモンの関与が考えられており、初潮が早い、閉経が遅い、高齢初産、血縁者の乳がん患者、肥満などが危険因子として知られています。

 乳がんの症状は、腫瘤を自覚するものが最も多く、入浴時に胸を触って気付かれる方などがよく来院されます。したがって乳がんの場合、自己検診が可能であることが重要なポイントで、触診の方法などがよく雑誌などでも紹介されています。その他には皮膚の引きつれや発赤・自壊、また腋のリンパ節腫大などでも受診される場合があります。また検診にて乳腺撮影(マンモグラフィー)で微細な乳がんが見つかるような場合も存在します。

 乳がんの診断にはマンモグラフィー・超音波検査・CT・MRIなどが用いられます。そして腫瘤そのものを針で刺し、組織を得ることにより確定診断に至ります。乳がんと診断されれば全身評価を行い治療へと進みます。

乳がんの治療

 乳がんの治療は手術・放射線・抗がん剤と分類されます。乳がん手術はこれまでいろいろな変遷を遂げてきましたが、大雑把に分けると乳房を温存するか、全て摘出するかの2通りです。近年の研究により手術方法によって予後は左右されないと考えられていますので、どちらの方法をとるかはケースバイケースとなります。また最近では乳房を病気で失った方に、シリコンなどで乳房を作り直す「乳房再建術」が保険収載されました。ただこれはどこの施設でも受けられるわけではなく、審査に通った施設でしか実施できません。山口県内には現在5施設ほどしかありませんが、当院はこの実施施設となっています。

 次に抗がん剤治療ですが、今の乳がんの治療に抗がん剤は切っても切り離せないと考えられています。抗がん剤治療もさまざまであり、女性ホルモンに反応するタイプであればホルモン剤を用いたり、そうでなければ通常の抗がん剤を使用することもあります。術後にホルモン療法を行う場合には5~10年の長期投与が必要になります。一方乳がんの抗がん剤はめざましく発展しており、次々に新しい薬剤が登場していると言っても過言ではありません。多種多様の抗がん剤があるため、治療には高度な専門知識を要するのも事実です。

 乳がんにおける放射線治療の代表は乳房温存手術に後に残存乳腺に対して行うものです。温存手術後の放射線治療は局所再発予防には重要と考えられます。それ以外には再発部位などへの照射が主なものとなっています。

乳房再建用の「エキスパンダー実施施設」および「インプラント実施施設」に認定されました

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 当院で乳がん全摘術後の二期的乳房再建が実施できます。

 厚生労働省中央社会保険医療協議会(中医協)は2013年6月12日、乳房再建手術に使用するラウンド型シリコンインプラント(人工乳房)の保険適用を承認し、7月1日からその適用が開始されました。次いで11月29日にはより自然な形状をもつアナトミカル型シリコンインプラントの保険適用も承認され、2014年1月8日からその適用が始まりました。
再建方法はまずエキスパンダーという皮膚を伸ばす袋を胸の筋肉の下に入れ、その袋に生理食塩水を徐々に注入し皮膚を伸展させたのち、最終的にインプラントに入れ替える方法がとられます。

 こうしたエキスパンダー挿入およびインプラント入れ替えの手術はどこの病院でも行えるわけではなく、「日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会」の定める施設認定基準を満たす必要があります。当院では実施に向けての諸条件が整い施設認定を申請していましたが、2014年4月18日付で同学会の認定を受けました。

 詳細をお知りになりたい方は、当院乳腺外科にお問い合わせください。

「色素法+蛍光法(PDE)」を用いたあらたな試み

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 乳がんの一部には、周囲のリンパ節を通って全身に転移する性質があります。

 当院では、「色素法+蛍光法(PDE)」という手法を用いて乳がん手術中に転移の有無を検査することができます。
転移がなければ、腋窩郭清(えきかかくせい:わきの下の脂肪やリンパ節、神経の一部を含めて、一塊で取り除くこと)を省略することもでき、患者様の心身のダメージ軽減につながります。

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