大腸がん

大腸がんとは

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 大腸がんは、長さ約2mの大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんで、日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。
 大腸がんは、大腸粘膜の細胞から発生し、腺腫(せんしゅ)という良性腫瘍の一部ががん化して発生したものと正常粘膜から直接発生するものがあります。その進行は普通はゆっくりです。大腸がんは、粘膜の表面から発生した後、大腸の壁に次第に深く侵入していき、進行するにつれてリンパ節や肝臓、肺など別の臓器に転移します。

 大腸がんの発見に関しては、大腸内視鏡検査などがありますが、便に血液が混じっているかどうかを検査する便潜血検査だけでも有効であることが明らかになっており、症状が出る前に検診などでの早期発見が可能です。便潜血検査で異常があったときには内視鏡検査などの追加検査を行います。早期に発見できればがんを完全に取り除ける可能性が高くなります。

 少し進行して、肝臓や肺などへの転移(遠隔転移と呼びます)が認められても、切除が可能な病状であれば手術により根治できる場合があります。完全に切除することが難しい転移が起こってから、がんが発見された場合は、手術に加え、放射線治療や抗がん剤治療が行われます。
 手術後に再発した場合でも早い時期に見つかれば、切除により根治できる可能性もあります。

大腸がんの症状

 大腸がんの症状は、大腸のどの部分に、どの程度のがんができるかによって異なります。多い症状としては、血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、原因不明の体重減少などがあります。中でも血便の頻度が高いのですが、痔(じ)などの良性疾患でも同じような症状がありますので、早めに消化器科、胃腸科、肛門科などを受診することが早期発見につながります。時には、がんによる腸閉塞症状から嘔吐(おうと)などでがんが発見されたり、大腸がんの転移が、肺や肝臓の腫瘤として先に発見されることもあります。

大腸がんの治療

1.内視鏡治療

 内視鏡を使って、大腸の内側からがんを切除する方法です。大腸の内部を直接目で見て観察でき、切除した病変を詳しく診断できるため、診断と治療の2つの目的のために行われます。病変の表面の様子を拡大して観察できる拡大内視鏡を用いることで、より精密な検査、診断、治療が可能となっています。

2.手術(外科治療)

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 大腸がんの治療は、手術による切除が基本であり、早期のがんでも手術が必要な場合があります。手術では、がんのある腸管とリンパ節を切除(リンパ節郭清)します。がんが周囲の臓器に及んでいる場合には、それらの臓器も一緒に切除することもあります。がんの位置に応じて切除範囲、合併症や危険性も異なります。

 直腸がんの場合は、直腸が骨盤内の深く狭いところにあり、その周囲には神経や筋肉があるため、切除する範囲によってはがんと一緒に神経や筋肉を切除します。その結果、排便、排尿、性機能に障害が起きることがあります。病状や手術の方法によっては、人工肛門の造設が必要になる場合があります。

 最近では、おなかに小さな孔をつくり、そこから小型カメラと切除器具のついた腹腔(ふくくう)鏡を入れ、画像を見ながらがんを摘出する腹腔鏡下手術という方法もあります。ただし、一般的な治療方法として確立されてはいません。この手術方法については、病状、各施設の方針などにより実施の基準が異なるため担当医にご相談ください。

 大腸がんの手術後は、軟便や下痢、便秘などの異常を生じることがあります。また、おなかの張りや腸閉塞、縫合不全(腸と腸をつないだ手術部位がうまくつながらないこと)や創感染(そうかんせん)などの合併症を生じることもあります。食事制限は特にありませんが、自分の胃腸の症状に応じて食べ物を調整するとよいでしょう。基本的には、おいしく、ゆっくり、楽しく、食べることです。食べ過ぎず、消化のよい食品、バランスのよい食事を心がけ、アルコールは飲み過ぎないようにしましょう。

3.放射線治療

 放射線による治療は、高エネルギーのX線を体の外から照射して、がんを小さくする効果があります。大腸癌の場合は、直腸がんでは手術前後の補助治療として、「骨盤内からの再発の抑制」、「手術前のがんのサイズの縮小」や「肛門を温存すること」などを目的として放射線治療を行う場合があります。また、切除が難しい骨盤内のがんによる、痛みや出血などの症状緩和、骨転移による痛みや、脳転移による神経症状などを改善するために放射線による治療が行われることがあります。

4.化学療法(抗がん剤治療、分子標的治療)

 大腸がんの化学療法は、主に「手術後のがん再発を予防するための補助治療として」と、「根治目的の手術が困難な進行がんまたは再発がんに対して、延命および生活の質(クオリティー・オブ・ライフ(QOL)の向上)を目的に行います。

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