卵巣がん

種類

 卵巣がんは、10-20歳代の若年を中心に発生する胚細胞腫瘍の悪性腫瘍と中高年女性を中心に発生する上皮性卵巣がんに大別されます。

原因

 直接の原因は不明な部分が多いですが、チョコレートのう胞(卵巣に発生した子宮内膜症で子宮内膜症性のう胞とも呼ばれており良性の疾患)からがんが発生することが多々あります。組織型としては明細胞腺がんと類内膜腺がんが主ですが、なかでも日本人に多く抗がん剤の効きにくい明細胞腺がんが急増していますので、チョコレートのう胞がある患者さんは厳重な経過観察が必要です。
 また、卵巣がんの5~10%に遺伝が原因の卵巣がんがあります。これは遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer; HBOC)と呼ばれており、主にBRCA1/2という遺伝子の異常によって発生し、親・姉妹・従姉妹に乳がんや卵巣がんの方がいれば注意が必要です。

症状

 卵巣がんはかなり大きくなるまで無症状のことが多いです。大きくなると、お腹が張ったり腫瘤を自分の手で触れたり様々な圧迫症状が出てきます。進行すると多量の腹水を伴うことも多く、腹部膨満感や呼吸苦が出現してきます。腫瘍が小さい初期の場合は、たまたま他の病気で婦人科を受診した際や子宮がん検診、内科の検診などで発見されることが多いです。

検査

 卵巣がんの検査では画像診断(超音波検査、MRI検査、CT検査、場合によってPET検査)が有用で、採血による腫瘍マーカーも診断の助けとなります。しかし、卵巣は腹腔内臓器のため子宮がん検診のように腟の方から細胞を採る器具を入れて直接細胞検査をすることは不可能ですので、最終的な診断は手術で開腹して摘出した卵巣腫瘍の組織を調べなければなりません。大半は手術中に行う術中迅速組織検査で診断をつけることが可能ですが、確実な診断は術後の病理組織検査によります。

治療

 10-20代の若年を中心に発生する胚細胞腫瘍の悪性腫瘍は抗がん剤による化学療法が非常に良く効くので子宮や反対側の正常な卵巣を温存することも可能です。
 上皮性卵巣がんの場合は、可能な限り手術でがんを摘出することが原則となります。摘出可能な卵巣がんでは、標準的な根治手術は単純子宮全摘出+両側付属器摘出(両側の卵巣・卵管摘出)+大網切除 (胃下部の脂肪組織切除)+骨盤内・傍大動脈リンパ節郭清ですが、進行がんでは根治手術を行うことが困難なケースもよくあります。この際には摘出可能な部分だけを摘出したのち、抗がん剤による化学療法を行い、腫瘍が縮小すれば再度手術でがんを摘出しにいくことも行います。また、全く摘出が困難な卵巣がんにもよく遭遇します。この際には試験開腹手術でがんの一部の組織だけを生検して確定診断(がんかどうかの診断)を行い、化学療法を行い、腫瘍が縮小すれば再度手術でがんを摘出しにいきます。上皮性卵巣がんは比較的に化学療法が効くがんが多いので、治療は"手術療法と化学療法の組み合わせ"によって行われることを御理解下さい。初診時の進行期(腫瘍の広がり)によって治療法が大きく異なります。
 早期の卵巣癌であれば、若年で今後の妊娠を強く希望する場合には、リスクを検討しつつ、子宮及び反対側の卵巣の温存を行うこともあります。

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