食道がん

食道がんとは

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 日本人の食道がんは、約半数が胸の中の食道中央付近から発生し、次いで1/4が食道の下部に発生します。食道がんは、食道の内面をおおっている粘膜の表面にある上皮から発生します。日本では、食道がんの90%以上が扁平上皮癌です。

 食道の内面をおおっている粘膜から発生したがんは、大きくなると粘膜下層に広がり、さらにその下の筋層に入り込みます。もっと大きくなると、食道の壁を貫いて食道の外まで広がっていきます。食道の周囲には、気管・気管支や肺、大動脈、心臓など重要な臓器が近接しているので、がんが大きくなるとこれらの臓器に広がります。これを浸潤といいます。腹部や首のリンパ節、別の臓器などに転移することもあります。

 食道の壁の中と周囲には、リンパ管や血管が豊富です。がん細胞は、リンパ液や血液の流れに入り込んで食道を離れ、食道とは別のところに流れ着いてそこでふえ始めます。これを転移といいます。リンパの流れに乗ったがん細胞は、リンパ節にたどり着いてかたまりをつくります。食道の周りのリンパ節だけではなく、腹部や首のリンパ節に転移することもあります。血液の流れに入り込んだがん細胞は、肝臓、肺、骨などに転移します。

食道がんの症状

1.無症状

 食道がんは、初期には自覚症状がないことが多く、健康診断や人間ドックのときに内視鏡検査などで発見されることが20%近くあります。無症状で発見された食道がんは、早期であることが多く、最も治る確率が高くなります。

2.食道がしみるような感覚

 食べ物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛んだり、熱いものを飲み込んだときにしみるように感じるといった症状は、がんの初期のころにみられるので、早期発見のために注意していただきたい症状です。軽く考えないで、内視鏡検査を受けることをお勧めします。がんが少し大きくなると、このような感覚を感じなくなります。症状がなくなるので気にしなくなり、放っておかれてしまうことも少なくありません。

3.食物がつかえるような感覚

 がんがさらに大きくなると、食道の内側が狭くなり、食べ物がつかえて気が付くことになります。特に丸のみしがちな食物(硬い肉、すしなど)を食べたとき、あるいはよくかまずに食べたときに突然生ずることが多い症状です。このような状態になっても軟らかいものは食べられるので、食事は続けられます。また、がんにより胸の中の食道が狭くなった場合にも、もっと上の喉がつかえるように感じることがあります。喉の検査で異常が見つからないときは、食道も検査しましょう。
 がんがさらに大きくなると、食道をふさいで水も通らなくなり、唾液も飲み込めずにもどすようになります。

4.体重減少

 一般に進行したがんでよくみられる症状ですが、食べ物がつかえると食事量が減り、低栄養となり体重が減少します。3ヵ月間に5~6kgの体重が減少したら、注意してください。

5.胸痛・背部痛

 がんが食道の壁を貫いて外に出て、周りの肺や背骨、大動脈を圧迫するようになると、胸の奥や背中に痛みを感じるようになります。これらの症状は、肺や心臓などの病気でもみられますが、肺や心臓の検査だけでなく、食道も検査してもらうよう医師に相談してください。

6.咳(せき)

 食道がんがかなり進行して気管、気管支、肺へ及ぶと、むせるような咳(特に飲食物を摂取するとき)が出たり、血の混じった痰(たん)が出たりするようになります。

7.声のかすれ

 食道のすぐ脇に声を調節している神経があり、これががんで壊されると声がかすれます。声に変化があると、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診する場合が多いのですが、喉頭そのものには腫瘍や炎症はないとして見すごされることもあります。声帯の動きだけが悪いときは、食道がんも疑って、食道の内視鏡やレントゲン検査をすることをお勧めします。

食道がんの治療

手術(外科治療)

1.手術について

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 手術は、体からがんを切り取ってしまう方法で、食道がんに対する現在最も標準的な治療法です。手術では、がんを含め食道を切除します。同時に、リンパ節を含む周囲の組織を切除します(リンパ節郭清)。食道を切除した後には、胃や腸を使って食物の通る新しい通路をつくる再検手術を行います。食道は頸部、胸部、腹部にわたっていて、それぞれの部位によりがんの進行の状況が異なっているので、がんの発生部位によって選択される手術術式が異なります。

2.放射線治療

 放射線治療は、手術と同様に限られた範囲のみを治療できる局所治療ですが、機能や形態を温存することを目指した治療です。高エネルギーのX線などの放射線をあてて、がん細胞を傷つけ小さくします。放射線治療には2つの方法があります。放射線を体の外から照射する方法(外照射)と、食道の腔内に放射線が出る物質を挿入し体の中から照射する方法(腔内照射)です。また、放射線治療は、治療の目的により大きく2つに分けられます。がんを治すことを目的にした治療(根治治療)と、がんによる痛み、出血などの症状を抑えたり、食べ物の通り道を確保しようとする治療(緩和治療)です。

3.抗がん剤治療(化学療法)

 化学療法とは、がん細胞を傷つけ縮小させる効果のある薬(抗がん剤)を体に投与し、治療を行う方法です。抗がん剤は血液の流れに乗って全身に行き渡るため、手術では切り取れないところや放射線をあてられないところにも、効果を期待することができます。多くは、別の臓器にがんが転移しているときに行われる治療ですが、単独で行われる場合と、放射線治療や外科治療との併用で行われる場合とがあります。

4.内視鏡治療

 内視鏡治療は、内視鏡を使って食道の内側からがんを切除します。切除の方法には、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。
 食道壁の粘膜下層までにとどまる「表在型」のがんのうち、リンパ節転移のない食道がんを早期食道がんと定義し、治療の適応が検討されます。

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