腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術

 副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘除、腎癌に対する腹腔鏡下根治的腎摘や小径腎癌に対する腹腔鏡下腎部分切除、腎盂・尿管腫瘍に対する腹腔鏡下腎尿管全摘除術、前立腺癌に対する腹腔鏡下小切開根治的前立腺全摘除術(別掲)を行っています。
 また、腎移植におけるドナー腎摘、腎尿管移行部狭窄症に対する腎盂形成術も腹腔鏡下に施行しています。
 当科では、日本泌尿器内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医が常勤し、執刀と指導にあたっています。

腹腔鏡下手術とは

 近年、医療技術の進歩はめざましく、外科手術においても患者さんのquality of life(生活の質)を高める方法が開発されてきています。これまでの手術は大きく皮膚を切開し臓器を外部に露出させて行う開放手術が主流でした。このため手術後の痛みも強く,体の回復も遅くなっていました。また,大きな傷は美容上にも問題がありました。
 しかし,約20年前より患者さんが手術によって受ける侵襲をより少なくするために腹腔鏡という内視鏡による手術が開発されてきました腹腔鏡下手術では腹壁を大きく切開せずに,腹腔内(腹部の胃や腸が入っているスペース)に炭酸ガスを注入してふくらませることにより術者の視野と作業空間を確保します。
 術者の眼の代わりに腹腔鏡と呼ばれるカメラを挿入し,これがビデオモニターに接続されます。また,術者の手の代わりに鉗子(かんし)という柄の長い手術器具を腹部の小孔から挿入します。術者はビデオモニターに映る腹腔内の様子を見ながら鉗子を使って手術を行うのです。
 腹腔鏡下手術は,1980年代後半に欧米で腹腔鏡下胆嚢摘出術が開発されてから急速に発達し,泌尿器科領域においても普及してきました。1996年に副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘出術,萎縮腎など良性腎疾患に対する腹腔鏡下腎摘出術がまず保険適応となり、2002年に腎尿管悪性腫瘍に対しても保険適応が広がりました。

腹腔鏡下手術の長所と短所

 腹腔鏡下手術のもっとも大きなメリットは、内視鏡を利用した拡大視野で、対象となる臓器を見られることです。肉眼より大きく細かい部分までクリアに見えるのが特徴です。拡大した視野で精密な手術操作を行うことによって、出血量も開放手術に比べると少なくなります。そのほかにも、腹腔の中の奥深くまで容易に到達して、観察や手術操作ができること、手術室にいるすべてのスタッフが視覚的な情報を共有できることなどがあります。
 患者さんにとってのメリットは、傷が小さいので術後の痛みが少なく、回復も速いため、退院から社会復帰までにかかる日数を短縮できます。治療後に残る傷も小さく、美容的観点からも優れています。
 腹腔鏡下手術の短所は、触診などに手が使えないので、直接手で触った感覚を確認できないことです。鉗子操作には慣れが必要で、また鉗子や内視鏡を動かすことのできる角度が制限されるため、特に縫合や結紮(糸をしばること)が、直接手を使って行うより難しくなります。したがって、手術者は専門のトレーニングを十分行って、確実な技術を身につけることが求められます。
 従来の手術に比べて手術時間が長くなることもあり、大きな出血が起こった場合や癒着が強い場合などには、患者さんの安全を最優先して途中で開腹手術に切り替えることもあります。また腹腔を膨らませるために用いる炭酸ガスには止血効果がある反面、血液中の炭酸ガス濃度が増えて合併症を起こすことがあります。

腹腔鏡下根治的腎摘・腹腔鏡下腎部分切除・腹腔鏡下腎尿管全摘除術

 腎臓や腎盂、尿管などの悪性腫瘍の治療のため腎臓を全摘あるいは部分切除を行っています.また無機能腎や萎縮腎の摘出も腹腔鏡下手術で行っています。従来の腎臓摘出手術では、腹や側腹を20~30センチ切開しなければなりませんでしたが、カメラや鉗子を入れるための小さなポートと、切除した腎臓を体外に取り出すための5-7センチ(摘出する腎臓の大きさによる)ほどの手術創で摘出できるようになりました。
 がんが小さくて7センチ以下の腎摘除の場合は、背中側から腎臓に到達する「後腹膜到達法」が、大きな腎がんには、消化器などの臓器を避けながら腎臓に到達する「経腹膜到達法」が選択されます。
 腎臓を部分的に切除する手術は、片方の腎臓をすべて摘出する手術に比べると、手術操作が煩雑で時間もかかります。そこで、当院では、部分的に切除する場合は、腎機能を温存するために、砕いた氷や冷たい生理食塩水を注入する冷却法による手術を行っています。

腹腔鏡下副腎摘除術

 副腎は左右の腎臓の上に1つずつある小さな臓器で、種々のホルモンを分泌しています。この副腎に腫瘍ができると、ホルモンが過剰に分泌されて高血圧や肥満などさまざまな症状があらわれます。従来の開放手術では腎摘除術と同様、腹部を20~30センチ切開して摘出していましたが、腹腔鏡下手術では腹腔鏡と鉗子を入れる3~4カ所の小さな手術創で手術を行うことができます。ほとんどの患者さんは翌日から歩いたり、軽い食事をとったりすることができます。特に問題がなければ術後1週間ほどで退院できます。当院では、副腎腫瘍摘除術については「経腹膜到達法」で行っています。

腹腔鏡下腎盂形成術

 腎臓で産生された尿が腎盂、尿管、膀胱と運ばれるのですが、腎盂と尿管の移行部(腎盂尿管移行部)が先天性の狭窄や血管により圧迫されて、尿が腎盂から尿管にうまく運ぶ事が出来ないために腎臓がはれる状態(水腎症)の患者さんに対し行われる手術で、狭窄部の尿管を摘除し、再吻合します。

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