HoLEP(ホーレップ)、ホルニウムレーザー前立腺核出術

HoLEP(ホーレップ)、ホルニウムレーザー前立腺核出術

 ホルミウムレーザー前立腺核出術(holmium laser nucleation of the prostate; HoLEP)
 当院では、県内西部地区で最初の施設として前立腺肥大症に対する新しい治療法HoLEPを平成25年5月より開始致しました。
 本治療法は、前立腺肥大症に対して、内視鏡下に外科的被膜に侵入し、腺腫被膜を破ることなく前立腺内腺を核出します。従来、開腹手術が選択されるような大きな前立腺症例に対しても、輸血の必要なく、安全に施行できるもので、入院期間が3-5日程度に短縮されます。

Ⅰ. “HoLEP”(ホーレップ)の概要

 “HoLEP”という最新の手術方法は、内視鏡を尿道から前立腺に通し、レーザーファイバーと呼ばれる機器を前立腺の内側(内腺)と外側(外腺)の境目に挿入し、レーザー光を照射し、肥大した内腺(腺腫)を外腺から切り離(核出)します。腺腫を核出し、尿道を広げた後、膀胱内へ移動した腺腫を細切・吸引しながら摘出します。この“HoLEP”による治療法は、TURPに比べて出血量を少なくすることが可能です。また、入院期間や完治までの期間も短く、低侵襲な治療法として注目され始めています。

Ⅱ.“HoLEP”治療の手順

1. 肥大した内腺を大きくくりぬく

  前立腺の組織は、尿道の左右(左葉・右葉)、および人体下側(中葉)からそれぞれ内側に向かって肥大していきます。HoLEPはホルミウム・ヤグレーザーを照射し内腺と外腺との境目に入り、内腺のみを核出します。核出された3つの前立腺組織は一度、膀胱内に移動させます。


2. 細切して排出

  肥大した前立腺組織の核出が終了すると、モーセレーターという機器を用いて、膀胱内に移動させた前立腺組織の核出片を細切し、吸引しながら体外に排出します。モーセレーターは先端が細い管になっており、尿道から膀胱まで挿入し、先端の小さい穴から核出片を吸引します。

 

3.カテーテル留置

 核出した前立腺組織をすべて体外に排出すると、モーセレーターを取り除き、かわって尿路の確保や保護、止血のために尿道カテーテルという管を挿入します。尿道カテーテルは血尿がほぼなくなった翌日には抜去されるのが一般的です。

Ⅲ.「HoLEP」治療のメリット

1. メスを使用しない、体に優しい手術

 内視鏡を使用する手術ですので、メスで腹部を切る必要がなく、体への負担がより少ない、患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)向上に貢献できる治療法です。

2. 安全性の高い手術

 HoLEPに使用されるホルミウム・ヤグレーザーは、水への吸収率が高いため、組織到達深度はわずか0.4mmです。また、ホルミウム・ヤグレーザーは、レーザーファイバーの先端を組織から5.0mm離すと組織に影響を与えません。つまり尿道や膀胱内が水で満たされていれば、ほかの組織に影響を及ぼすことなく照射できます。そのため、出血が少なく、切除痕の回復も早く、結果的に入院期間も短縮されるといったメリットも生まれます。

3. 痛みが少ない

 このHoLEPは、前立腺組織のうち、血管が少ない外腺と内腺の境目を切除しますので、出血や術後の痛みが少ない手術です。そのため、鎮痛薬を使用する頻度が少なくなっています。

4. 合併症が避けられる

 HoLEP同様、内視鏡を使用する前立腺肥大症手術であるTURP(経尿道的前立腺切除術)は、非電解質の灌流液(手術の際の出血や切除した組織を洗い流すための液体)が体内に吸収されることによる「低Na血症」という合併症を起こすことがあります。しかし、HoLEPでは、血液・組織液と浸透圧が等しい生理食塩水を灌流液として使用するため、「低Na血症」が起こりません。

5. 再発の可能性が低い

 HoLEPでは、肥大した前立腺組織を核出するため、残存組織が少なく、再発の可能性はほとんどありません。

 患者さんへのメリットが大きいHoLEPですが、実施している医療機関は、山口県で4施設(岩国医療センター、山口大学医学部附属病院、山口県立総合医療センター、当院)です(2017年5月現在)。

費用について

 健康保険適用です。

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