軟性尿管鏡とレーザーを用いた新しい尿路結石治療(f=TUL)

Ⅰ.f-TULとは

 flexible-TUL(f-TUL) (軟性鏡を用いた経尿道的尿路結石砕石術) は胃カメラのように軟らかい軟性腎盂尿管鏡とホルミウムヤグレーザーとの組み合わせによる新しい尿路結石の治療法です。
 従来金属製の硬性尿管鏡(棒のように真直ぐな尿管鏡)で行っていたTUL(経尿道的尿路結石砕石術) は内視鏡を尿道から膀胱、尿管へ挿入して、結石を直接カメラで確認しながら少しずつ砕石あるいは抽石する手術法ですが、硬性尿管鏡の性質上その観察範囲は限られ、患者さんによっては尿管の途中までのこともあり腎臓内まで充分にみることができません。これに対して軟性腎盂尿管鏡では腎臓内まで充分に観察でき、結石をホルミウムヤグレーザーで砕石して抽石することができます。f-TUL では腎・尿管のほとんどすべての部位の結石をより高い確率で、より安全に治療することが可能になりました。できる限り砕石片の回収も行うので、今までより短期間での結石消失も期待できます
 当院泌尿器科では、1993 年に体外衝撃波砕石術(ESWL)を下関市内の病院では初めて導入、経尿道的尿管砕石術(TUL)や経皮的腎砕石術(PNL)の内視鏡手術も行い、多くの腎・尿管結石症患者さんの治療をしてきましたが、いずれも優れた手術治療法で、現在は、開腹し結石を摘出する手術(切石術)はほとんどなくなりました。
 しかしながらTUL では治療中に尿管の結石が腎臓内に上昇し、ESWL へ変更になったり、ESWL では決して大きくはない結石に3回治療をしても効果がなかったり、砕石片が尿管に長期間とどまったりすることがあり、またPNL では血管の塊である腎臓に比較的大きな穴を開けることで多くの出血をきたすこともありました。
 
 このように尿路結石の位置と大きさによって、近年、尿路結石治療ガイドラインの変遷がみられ、これを下記に記載しております。
 
腎結石
  2002年日泌学会 2001年EAU 2005年AUA
<20mm ESWL ESWL ESWL
20mm< PNL+ESWL PNL PNL
サンゴ状 PNL+ESWL PNL PNL
 
尿路結石
    2002年日泌学会 2007年AUA/EAU
上部尿管 <10mm ESWL ESWL
10mm< ESWL TUL
中部尿管 <10mm ESWL or TUL TUL
10mm< ESWL or TUL TUL
下部尿管 <10mm ESWL or TUL TUL
10mm< TUL TUL
 
 最近の尿管鏡の細径化、Ho-YAGレーザーの普及、アクセスシースなど周辺機器の改良などで、TULの治療成績が改善し、合併症の頻度も低下しています。そのため、2007年にAUA/EAUの尿管結石治療ガイドラインが改正されて以降、欧米では尿管結石治療の約90%がTULで治療されています。
 TULの中でも、軟性尿管鏡とHo-YAGレーザーを用いるflexible-TUL(f-TUL)については、これまでPNLで治療されていた大きな腎結石についても、PNLと同等の治療効果が期待できる一方で、合併症はPNLよりかなり低くなっています(PNL:80%、TUL:20%)。
 

Ⅱ.f=TULの治療成績と合併症

 TULの治療成績と合併症です。いずれもこれまでの報告と遜色のない治療成績と考えています。特に大きな腎結石の治療成績はESWLより良好で、PNLより合併症が少ないです。この結果は論文にまとめて投稿中です。
結石消失率
    ESWL(169例) TUL(183例)
結石の部位 腎杯 61.8% 94.5%
腎盂 69.2% 85.7%
上部尿管 88.9% 92.9%
中部尿管 100.0% 100.0%
下部尿管 90.0% 100.0%
結石の大きさ 10mm未満 85.3% 96.8%
10~20mm 75.5% 92.3%
20mm以上 50.0% 88.9%
合併症
  ESWL(169例) TUL(183例)
砕石片の嵌頓 1.8% 0.5%
発熱 1.2% 5.5%
腎周囲出血 1.2% 0.0%
尿管狭窄 0.6% 0.5%
軽度な尿路損傷 0.0% 3.3%
開腹手術への変更 0.0% 0.5%
敗血症 0.0% 0.5%

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