不妊症治療

不妊症治療は、排卵と受精を補助する治療

 不妊症スクリーニング検査にて不妊原因が特定できた場合には、それぞれの原因に応じた治療を行います。
 一方、原因が特定できない場合には一般的にはタイミング法より開始し、数周期で妊娠しない場合にはステップアップし、排卵と受精を補助する治療を行い、卵と精子が出会う確率をより高くする治療法へ進みます。
 そして、より自然に近い不妊治療(保険診療)での妊娠が難しいご夫婦に対し、生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)(自費診療)での治療を行います。
 また、不妊治療は、治療によっては身体への負担・ストレスや通院の負担が大きい為、それらの負担が少しでも軽減できるように、治療法(排卵誘発方法等)を相談・調節したり、遠方からの通院であれば、近医での注射や自己注射等を取り入れたりし、治療による負担の軽減を行っています。

不妊治療法=ステップアップ(排卵と受精)の方法

 ステップアップの方法は女性(排卵)と男性(受精)の二通りがあります。(下図)
 


「女性側のステップアップ」
 女性は通常1ヶ月に1個排卵します。この数を増やしていくことが女性側のステップアップとなります。これにはクロミフェンやHMG製剤と言った排卵誘発剤が使われます。後で詳しく説明していますがクロミフェンではだいたい2~5個ぐらいの卵胞が発育します。HMGでは打ち方によって排卵できる数は変わってきますが2個から多いときには30個ほどできます。卵胞の数が増えれば増えるほど排卵される卵の数は増え、同時に妊娠する確率も増えていきます。これが女性側のステップアップです。

女性側のステップアップの注意点
 卵胞の数が増えれば増えるほど妊娠する確率が上がりますが、同時に問題点も出てきます。卵胞は排卵時期に約20mmの大きさになります。 例えば、その卵胞がたくさんできたとしたら、双子や三つ子(多胎)の可能性がでてきます。また、卵巣自体が大きくなってしまいます(卵巣腫大)。同時にお腹の中に水がたまることがあります(腹水)。これらの副作用は排卵誘発剤の使い方によって軽い場合もあれば入院が必要なほどひどい場合も出てきます。ハイリスクハイリターンと言えるかもしれません。

「男性側のステップアップ」
 男性側のステップアップは精子を卵に近づけることによって行います。
 通常性交渉によって精子は膣内に出されます(①の部分)。そこから、受精の場所まで約10cmの道のりを泳いでいきます。
 さて、それでは②の部分に精子を入れたらどうでしょうか。精子は3cm泳げば卵に到達できます。これを人工授精(AIH)と言います。
 次に③の場所に入れたらどうでしょうか。これは腹腔内に入れると言うことを示しています。排卵した卵は精子と混ざって卵管内に入っていきます。その距離は約1cmと言えるでしょう。これを腹腔内人工授精(IPI)と言います。この処置はすべての施設で行っているものではありません。
 次に卵を取ってきて直径1cmの穴の中に入れます。そこに精子をかけてあげると、卵と精子の距離は1cmになります。これを体外受精(IVF)と言います。
 最後に卵を取ってきて細い針で精子を注入します。そうすると卵と精子の距離はなくなります。これを顕微授精(ICSI)と言います。

 以上のように女性側は卵の数を増やすことによってステップアップを行い、男性側は卵と精子の距離を縮めることによってステップアップを行っていきます。

ステップアップの目安


 それでは一つの治療をどれくらい試してみればよいのでしょうか。
 これについては一定の見解は得られていませんが、6回以上同じ治療を繰り返すことは得策ではないと考えられている施設が多いと思います。 当院では3回から5回で次へのステップアップを考慮しています。3回から5回というように幅があるのは年齢や不妊期間によって回数を使い分けているからです。例えば、年齢が高かったり不妊期間が長い方であれば3回ぐらいでステップアップを勧めますし、お若かったり不妊期間が短いようなら5回ぐらいは試してみましょうと言う具合にしています。
 また、3回から5回終わったら必ずステップアップしなければならないと言うわけではありません。3回から5回終わった時点で今の治療を続けるかステップアップするかを再考しましょうということです。
 
治療法(受精)
治療法(受精)   方法
Timing法  超音波検査や尿検査・血液検査にて排卵日を推定し、性交をもつ方法です。排卵日前~排卵日で数回の通院が必要です。
人工授精(IUI)   Timing法同様、排卵日を推定してIUI日を決定します。IUI当日マスターベーションで採取した精液から良好な精子を取り出して、子宮口より子宮内に注入します。AM8:30~9時までに精子を持参してもらい、午前中に人工授精します。
 当日、精子提出時間が8:30より早い時間での受け取りも可能です。また当日採精が難しい場合には、事前に精子凍結を行う場合もあります。ご相談下さい。
腹腔内人工授精(IPI)(現在のホームページの腹腔内人工授精の方法の図を流用)  Timing法同様、排卵日を推定してIPI日を決定し、精子持参については、IUIと同じです。
 経腟超音波にて確認しながら、腟の方から腹腔内(ダグラス窩・排卵した液が溜まる場所)を穿刺し精子を注入します。排卵した卵は精子と混ざって卵管内に入っていきます。
 穿刺の痛みはごくわずかなので、麻酔はなく一人で帰れます。
ART 体外受精(IVF  卵巣からを取り出し、体外で精子と受精させ、数日後子宮内に受精卵(胚)を移植する方法です。
 顕微受精では、卵子の中に精子を注入します。
顕微授精(ICSI
 
治療法(排卵)
治療法(排卵) 方法
クロミフェン療法(内服薬)  通常月経5日目より5日間内服し、卵胞発育を促します。
hMG療法(注射薬)  月経6~10日目頃より注射を開始し、連日注射を行い、卵胞発育を促します。
 投与量が多いと、排卵数が多くなり、卵巣過剰刺激症候群になる事があるので、超音波検査での卵胞発育の確認と同時に血液検査を行います。

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