子宮頚がん

がんの発生する細胞別にみた種類

 子宮頸がんは、扁平上皮細胞に発生する「扁平上皮がん」と円柱上皮細胞に発生する「腺がん」に大きく分けられます。以前は扁平上皮がんが多かったのですが、最近では腺がんが増加してきており全体の約20%を占めるようになっています。腺がんは扁平上皮がんより奥の方に発生するため、発見しにくく(診断しにくく)初期からリンパ節や卵巣に転移しやすく、放射線治療や化学療法(抗がん剤治療)が効きにくいという性質があります。

原因、疫学

 



 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染であることがかなり明確になってきています。 HPVは皮膚や粘膜に感染するウイルスでほとんどが性行為によって感染します。HPVは100種類以上の型があり、一般的には16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68の型は子宮頸がんの発生と関係が深いと推定されハイリスクHPVと呼ばれていますが、数々の研究よりこれらハイリスクHPVの中でも特に16,18,31,33,35,45(日本では少ないです),52,58の8タイプはがん化のリスクが高いことが分かってきています。HPV感染により、前がん病変である子宮頸部異形成(軽度:CIN1→中等度:CIN2→高度:CIN3)を経てがん化しますが、感染者の多くではウイルスは自然に体内から排出され自然治癒してきます。また、ハイリスクHPVは子宮頸がんの原因だけでなく、咽頭がん、腟がん、外陰がん、陰茎がんの発生にも関わっていると考えられています。性交渉の開始時期の若年化や複数の相手との交渉により、子宮頸がんの発症年齢は20代から増加しています。

 

症状

 子宮頸がんは進行してくると不正出血(特に性交渉後の出血)や帯下(おりもの)が増加し悪臭を伴うなどの症状が出てきますが、初期の場合はほとんどが無症状です。したがって子宮頸がん検診で前がん状態やがんの初期に見つけて対応することが非常に大切になります。

検査

 子宮頸がん検診では子宮の入り口の粘膜をヘラやブラシ(妊婦さんでは綿棒)で擦って細胞を採取して調べる細胞診断が行われます。子宮頸がんにおける診断率は扁平上皮がんでは99%以上という信頼性です。この結果、異常が疑われたら、異常の程度によりHPV検査やコルポスコピー検査(腟拡大鏡診)を行います。コルポスコピー検査で病変を疑う所見があれば病変部の組織を少量採取する狙い組織診が行われます。ここで高度異形成(CIN3)以上の病変が疑われれば、さらに組織を広く採取して調べるために子宮頸部円錐切除術(子宮頸部を円錐状に切り取ります)が必要となります。
 IB期以上の浸潤がんを疑う場合には画像診断(MRI検査やCT検査など)や腫瘍マーカー検査などが追加されます。

治療

子宮頸部異形成に関して

 前がん状態の子宮頸部異形成のうち軽度異形成(CIN1)と中等度異形成(CIN2)は大部分が治療なしで自然治癒してしまい、その全てががんへと進行していくわけではないので、特に治療はせずに多くの場合経過観察されます。しかし中等度異形成(CIN2)の場合、1~2年の経過観察で改善しない場合、ハイリスクHPV 16,18,31,33,35,45,52,58のいずれかが陽生の場合、継続した受診が難しい場合、患者さんの強い希望がある場合などはレーザーを使用して病変部を蒸散する治療も考慮されます。
 高度異形成(CIN3)はがん化する可能性や、すでに早期のがんが隠れている可能性があるため、確定診断と治療を目的とした子宮頸部円錐切除術が必要となります。しかし、若年女性では確実にCIN3以上の病変がないと診断された場合には、将来妊娠した際の流早産のリスクを軽減するために子宮頸部を切除せずにレーザーを使用して病変部を蒸散する低侵襲手術も考慮されます。しかし、再発の危険性がありますので、必ず治療後も定期健診(細胞診)を受けましょう。

上皮内がん(CIS)に関して

 上皮内がん(CIS)の治療は若年女性では子宮を温存(子宮を摘出せずに妊娠できる状態で残します)して子宮頸部円錐切除術のみで経過観察します。子宮の大部分は残っていますので、月経もありますし、妊娠することも可能です。しかし、子宮頸部の長さが短くなることによる流早産のリスクや、傷が瘢痕化して堅くなることによって分娩時に子宮口が開きにくくなり帝王切開のリスクが高まる可能性はあります。
 閉経前後より御高齢の方では子宮頸部円錐切除後に子宮口が手術の影響でふさがってしまうことが多いため、子宮頸部円錐切除のみで経過観察とした場合に定期健診のための細胞診の器具が子宮内に挿入できず、子宮がんが再発した際には子宮内に再発したがんを見つけることが遅れてしまします。このため、閉経前後より御高齢の方や将来妊娠を希望しない方では子宮全摘出を勧めます。のため、閉経前後より御高齢の方や将来妊娠を希望しない方では子宮全摘出を勧めます。

微少浸潤がん(IA期)に関して

 微少浸潤がんは、わずかに間質に浸潤しているがんで、IA1期(間質浸潤の深さが3mm以内で奥行き方向の広がりが7mm以内のもの)とIA2期(間質浸潤の深さが3mmをこえるが5mm以内で奥行き方向の広がりが7mm以内のもの)に分けられます。子宮頸がんは骨盤内のリンパ節に転移しやすいのですが、Ia1期ではほとんどリンパ節転移はありません(リンパ節転移の頻度は0~1%)。これに対してIA2期では骨盤内リンパ節転移の頻度がやや高くなります(リンパ節転移の頻度は10%以下)ので治療法が変わってきます。
 IA1期では単純子宮全摘術が治療の原則で、これにより高い治癒率が得られますが、若年者では脈管侵襲がない場合には妊孕性保持の目的で、縮小手術(円錐切除術)を行い子宮は温存しています。IA2期の場合には準広汎子宮全摘出術と骨盤リンパ節郭清が原則となります。若年者で脈管侵襲がない場合には 子宮温存も考慮した治療を選択しています。

浸潤がんに関して

 IB1期とIIA1期の浸潤がんでは、手術(広汎性子宮全摘術および骨盤リンパ節郭清)が行われることが一般的ですが、年齢・全身状態・合併症の有無によって放射線治療を行うこともあります。IB2期、IIA2期、IIB期で腫瘍が大きい場合には手術前に腫瘍の縮小のために抗がん剤による化学療法(ネオアジュバント化学療法)を行い、腫瘍を小さくした後に手術(広汎性子宮全摘術および骨盤リンパ節郭清)を行うか、同時化学放射線治療(根治的放射線治療と同時に抗がん剤による化学療法を行う治療)が選択肢となります。
 III期やIVA期では一般的には同時化学放射線治療(根治的放射線治療と同時に抗がん剤による化学療法を行う治療)が第一選択ですが、高齢者や合併症のある患者さんの場合は放射線治療単独も検討されます。一般的には手術は行いません。
 IVB期は遠隔転移しているがんですので、転移が複数の臓器、複数の箇所に広がっている場合には化学療法が行われる場合が多いですが、緩和ケアも重要となってきます。
 ただし、当院では放射線療法の外照射は可能ですが腔内照射の装置がありませんので腔内照射が必要な症例では山口大学医学部附属病院や山口県立総合医療センターに依頼しています。

 

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